Canon EOS Kiss Digital N
BORG77ED+Reducer×0.85DG(合成焦点距離425mmF5.5)
M31 アンドロメダ大星雲 / 生石高原
ニコンやキャノンが激しいデジタル一眼競争を繰り広げる中、ペンタックスユーザーはそれをうらやましいと見ているだけだった。特に天体写真撮影においては、自然風景では目立たなかった長時間露光時のノイズの現れ方には歴然の差を見せ付けられ、PENTAX *istDには撮影に限界を感じていた。そしてついに2005年9月、EOS Kiss Digital Nを購入。
現在は2台所有し、一台はホワイトバランスをプリセットすれば一般撮影が可能な20Daの赤外カットフィルタに換装、もう一台は天体写真専用のUIBARフィルタと呼ばれる赤外カットフィルタに換装しています。

大きな液晶はとても見やすく
各種ボタン類も押しやすい位置
回して選ぶ撮影モードと測光方式
MZ−3のダイヤルのよう
使用バッテリーは極小サイズ
寒冷期の電源の確保に不安あり
タイマーリモートコントローラを改造
全自動で星の撮影ができる
10万円を切る800万画素デジタル一眼レフ。プラスチックなボディにはチープさを感じずにはいられない。また、モードダイヤルもプリントスチールステッカーを貼り付けただけのようなチープな作り。コストパフォーマンスを高めるには致し方ないことなのだが・・しかしながらその内部の性能は思った以上に高く、使うほどに信頼感を得ることが出来る。
測光は35分割TTL開放測光方式。評価測光・部分測光・中央部重点平均測光の3種を兼ね備える。日中の風景においては非常に高精度な測光を行える。
シャッターは1/4000〜30秒。MZ-3や*istDと同等だが、KissDNはISO100の設定ができるのは特筆。綺麗なボケを得たい開放での使用には非常に強いのだ。
*istDでは2〜3分で真っ赤に染まり取り除くのに非常に苦労した、長時間露光時の熱によるノイズ(いわゆる赤カブリ)も、5分程度の露光ならノイズ低減機能を使わずともほとんど感じられない。デジタル一眼レフにとって、これは非常に大きな進歩だと言える。
KissDigital Nでの長時間露光によるノイズ(ノイズ低減機能off)
1分 3分 5分
1分 3分 5分
また、バルブでの長時間露光時には、背面の液晶パネルに露光時間のカウントが表示され、レリーズから何秒露光しているかが一目で判るのがとても便利。
電源は専用のリチウムイオンバッテリーを使用。リチウムイオンは低温には強いが、このバッテリーは非常に小さく、素材の熱伝導を考えると少し心配だ。その場合はバッテリーグリップを使用すると良いだろう。
カプラ改 7.4Vで正常動作
カプラのジャックを交換改造 レギュレータで7.4Vに電圧変換
それでも心配な方は、少々高度な改造が必要になる。純正ACアダプタに付属の「カプラ」と呼ばれるバッテリーと同サイズの接続用部品を単体で購入して少々改造することで、レギュレーターを併用して8.1Vに変換、12Vポータブル電源で使用することが可能になるのだ。
また、天体写真撮影において、別売りのタイマーリモートコントローラのプラグをKissDNで使用できるようにミニミニステレオプラグに交換してしまえば、インターバル、露光時間、撮影回数を入力すれば全自動撮影が可能となる。半田付けができるなら問題のない小さな改造だが、これはノイズの少ないKissDNだからこそ安心して使用できる大きなメリットだ。

しかし良いことばかりでもない、やはり欠点もあるのだ。KissDNの最大の欠点は、ファインダーの見難さ。そしてやはりEFレンズしか使えないということ。MFで撮影するときにはこれは大きな問題として挙がってくるだろう。ピントの山が掴みきれないファインダーとあまりに軽い純正レンズのヘリコイドの組み合わせが仇となるということだ。
まあ、考えてみれば純正レンズと言うものはメーカーバリューが上乗せされているので高価なものとなっているが、一方レンズメーカーが作り出すレンズの性能の向上は著しく、低価格で高品質なものが手に入るようになった。詰まるところレンズメーカーのものと大差ないと割り切ってしまえば良いのだ。
適度なヘリコイドの重さを得ることの出来るレンズメーカーの商品を使用することですぐに解消されることであろう。純正という言葉のまやかしに左右されない強い撮影欲があれば、簡単に回避することの出来る問題である。見栄やファッション性などを気にしているかどうか・・そういう気持ちの問題だ。
とはいえ、レンズメーカーのレンズにしてもファインダーの見え味は変わらないのでピントの山を掴みきれない事実は残る。MFでのピント合わせは当面の課題となりそうだ。

しかしながら天体写真撮影においてはどんなカメラでもファインダーの像を見ながらでは要求されるような正確なピントはとても出せないので、PCに取り込んで拡大し、星の大きさや光芒のシャープさなどを比較しながらピント位置を決定する作業は避けようが無い。よってEOS DIGITALシリーズのファインダーの見づらさは全く問題にはならないだろうが、ことのほかシビアな天体写真においてのピントを合わせるにはピントリングのピント位置を1/10mm単位まで管理できる手段を考えなければならず、やはり手動でピントリングを回してピントを合わせることが非常に困難であることには変わりない。詰まるところ、天体写真におけるピント合わせにはモーター駆動によりピントリングの回転を制御するシステムの確立が望まれるはずだ。
天体写真専用 Kiss Digital N改への改造の手引き
天体写真では星雲の赤い色が綺麗に出ることを必要とします。しかし一般に販売されているデジタル一眼レフのローパスフィルタは星雲の赤い部分の光・Hαをほとんど通しません。そこでC−MOS手前に取り付けられているローパスフィルタをHαを通すフィルタに換装する方法があります。
一応メーカー純正ですが普通のフィルタではない、天体写真専用と謳われる20Daのローパスフィルタが運良く手に入り、さっそく換装。
ノーマルKissDNではHαの透過率は約20%。20Daは50%、約2.5倍になります。かなり効果は期待できそうです。しかしながら僕にはその改造の技術はありませんので、いつも撮影をご一緒しているsyoshi-さんに改造をお願いしました。
海外のサイトでは検索で出てきますが、恐らく日本では初公開?KissDNのローパスフィルタ換装改造の一部始終を実況中継します。
ただし改造するとメーカーや販売店の保証は一切効かなくなります。またフィルタ換装改造の作業には非常に高度な技術を必要とします。あくまでも自己責任で行ってください。
⇒Kiss Digital N改 ローパスフィルタ換装改造の手引き
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