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最新版のデータについては、宇宙から見た夜の地球:DMSP衛星による地球の夜景データ(1992年〜2012年:Google Maps版)をご覧下さい。
米国NOAAが提供する「宇宙から見た地球の夜景」。地球からの非常に暗い光を観測できるユニークな気象衛星DMSP (defense meteorological satellite program)が観測した膨大なデータの中から、常に出現する光源のみを全地球的に収集したものがWorld Stable Lightsデータである。
このデータは、月光に照らされた雲の検出といった気象向けの用途にとどまらず、市街地の照明・火事・油田の炎・漁火・雷・オーロラなどの光の検出にも使うことができる。そしてその結果は、人間活動に関する情報の収集(人口分布や経済活動等)や、森林火災の発見、天文学のための光害推定などに利用されている。
データセットとしては、1994年から1995年の間の6ヶ月間に収集したデータが、Data Downloadで公開されている。ただし雲で覆われている地域の夜間光は観測できないため、同じ地域を撮影した複数の衛星画像をうまく合成する処理を行っている。つまり地球の一瞬を切り取った写真ではないことに注意したい。最も解像度が高い1km解像度のデータにはすべての光源が収録されているが、光源の種類ごとに分類されたデータセットなども同じページからダウンロードできる。
上の画像は、World Stable Lightsデータから日本付近のみを切り出して作成した画像である。光が強いほど明るい黄色となるように着色し、背景にはBlue Marbleデータセットを用いた。この画像で黄色に着色された場所は、そこに何らかの照明があること、すなわちそこに人が住んで照明を使っていることを意味している。すると、夜間の光の明るさ、すなわち照明がどのくらい使われているかという情報から、人口の大まかな分布が推定できてしまう。地球の夜の姿を写した衛星画像から、地球上に暮らす人口の分布が推定できるというのは、ちょっと不思議なことではないだろうか。
しかし正確に言うと、推定できるのは人口分布そのものではない。というのも、一人当たりの照明の明るさはエネルギー消費量、つまり照明にどれだけのエネルギーを消費できるかという要因にも依存するからである。例えば、夜間の広告用照明などは必要最低限な照明ではないだろうし、その量は経済活動の活発さに依存するだろう。すなわち、経済活動の活発さの地理的な分布も、この画像から大まかに把握することが可能なのである。
例えば黄色にべったりと塗り潰された関東平野を見れば、そこに多くの人々が暮らしながら大量のエネルギーを消費していることがわかる一方で、朝鮮半島における南北の光の違いに注目すれば、人口が多いと夜間の光も明るい、わけではないこともわかる。北朝鮮の人口を韓国の半分程度と推定すれば、本来なら北朝鮮も韓国の半分くらいは明るくてよいはずだ。しかし画像上で北朝鮮がこれだけ暗く見えているということは、両国の経済活動に圧倒的な差があることを暗示しているといえる。
いっぽう時間軸上でみると、明るさが急に変動することもある。例えば地震や洪水などの大規模自然災害の発生によりエネルギー供給が寸断されると、照明が使えなくなることから明るさが急激に減少する。このような変化に着目すると、明るさの変化から被災地域の広さを推定することができる。また人為的な災害、例えば大規模停電などの発生の際にも、その被害の広がりの把握には衛星のような広域的な観測手段が適している。下のリンク集に挙げたページでは2003年8月の北米大停電の広がりが捉えられている。ニューヨーク中心部は確かに暗闇となっているものの、ニューヨーク周辺や米国北東部の全域が暗闇に包まれていたわけではないことがわかる。また2011年3月の東日本大震災の時にも、東北地方から関東地方にかけての明るさの変化が観測されている。
このように、World Stable Lightsデータセットは非常に興味深いものだが、残念なのはこれが1994年から1995年の観測データに基づいており、多少古くなっていることである。例えば、中国は、このデータ収集当時よりもかなり明るくなっているのではないか? 北朝鮮は相変わらず暗いのか? そんな疑問が湧いてくる。そんな最近の変化については、夜の地球:DMSP衛星による地球の夜景データ(1992年〜2012年:Google Maps版)で見られるようにした。
上記の画像は、米国NASA Goddard Space Flight Centerが配布するBlueMarbleデータ、および米国NOAAが配布するNighttime Lights of the Worldデータを用いて、国立情報学研究所が作成したものです。
気象や海洋、または太陽活動などを監視するための人工衛星。
http://ngdc.noaa.gov/eog/dmsp.html
DMSP衛星の撮影データから作成した「宇宙から見た夜のあかり」は、人口分布やエネルギー消費など、地球が抱える様々な問題を考えさせる画像である。
http://earthobservatory.nasa.gov/Newsroom/NewImages/Images/earth_lights_lrg.jpg
Earth's City Lightsのより詳細な紹介。高解像度データも提供されている。
http://visibleearth.nasa.gov/view_rec.php?vev1id=5826
NASA Astronomy Picture of the Day。宇宙からみた地球の夜景の画像の紹介。
http://antwrp.gsfc.nasa.gov/apod/ap020810.html
北朝鮮が暗いことをDMSP衛星画像で検証する。
http://www.globalsecurity.org/military/world/dprk/dprk-dark.htm
2003年8月の北米における歴史的大停電のbefore & afterを撮影した衛星画像。
http://www.noaanews.noaa.gov/stories/s2015.htm
DMSP衛星で観測した夜間光の時間変化を集めたページ。
http://ngdc.noaa.gov/eog/nighttime_lights_loops.html
2011年3月の東日本大震災における3月9日から3月31日までの夜の明りの変化。
http://www.ngdc.noaa.gov/eog/data/web_data/japan/loop/Japan_Tsunami_loop.html
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