イメージに近づける
実践!
さてさて、ここに書いたコツ、読むだけではよく理解できない・・という方が多いことでしょう。実際のところ僕も言葉だけではきちんと伝えることが出来ませんし、後からだとよく覚えていないことも多々あります。写真というものはそのイメージを映像に変えて伝える手段であるのだと思いますので、あまり参考にならないかも知れませんしかなり偏った撮影方法かも知れませんが、イメージの例をあげてその完成に至るまでの撮影過程を写真とともに紹介し、僕の頭の中で描いたイメージとそのイメージを沸かせる原因となる背景、撮影時の被写体への向き合い方、カメラ操作などを出来るだけ詳しくたどってみます。
「ふ〜ん、こいつはこんな撮影してるのか・・」程度にご覧くださいませ。(^^ゞ


(例1)緑の中で光と戯れる桜
例1は事前にイメージを決めて撮影する場合の例です。
僕は桜を撮影するのが一年の始まりのように感じています。花の命は短くて・・と言う言葉にそのまま当てはまるような息の短い桜の花、その短い瞬間に毎年違うイメージを沸かせて撮影するのが楽しいと感じている被写体です。楽しみにしている被写体だけにおのずと至極具体的なイメージを事前に描きます。桜がうまくイメージ通りに撮影出来ればこの一年、楽しい撮影が出来そうで気持ちが軽くなります。(^^ゞ
2001年は綺麗に咲乱れる桜の花吹雪舞う頃に集う人々を取り入れてほのぼのとした雰囲気の写真をイメージしてみましたが、2002年度は桜が緑溢れる山で光と戯れているような写真・・が目標でした。
ではその桜の撮影を思い出してみます。

No.1
No.1 いい枝ぶりの桜の花。まずは玉ボケになりそうな光を見つけました。レンズは85mmF2、絞りはF2.8。花との距離は多分最短撮影距離の80cmに近く、バックの玉ボケは杉林の木漏れ日です。
平均測光のペンタックスSPFで撮影していますが、花が白く画面が明るいのでISOダイヤルを回してプラス0.7の補正をしました。露出補正にはいつも僕はISOダイヤルをよく使います。プラス補正の場合はISOの数値が小さいほうへ、マイナス補正の場合はISO数値が大きいほうへ回します。

No.2
No.2 ファインダーで覗いていても玉ボケがうるさいくらいに感じましたので、少し移動してみましたがいい光が見つかりませんでした。被写体を変え、程よい光を探してみます。
もう葉桜の時期になってしまいましたが綺麗な花を見つけ、太陽光が木漏れ日になるところまで回り込んでみると光加減が良さそうなので撮影してみます。日が射すごとにキラキラと玉ボケが光ってとても綺麗でした。一番際立つ花が下向きに垂れている印象だったので縦構図にして画面の下に余韻を持たせ、バックが暗くなったので露出を抑えます。

No.3
No.3 もっといいアングルがありそうなのでもう少し近づいてみます。
花が大きくなって表情豊かに感じました。少しハイキーにしてファンタジックに仕上げたいと思ってISOダイヤルを回しプラス0.3補正してみました。
花のディテールがよく分かるようになりましたが、玉ボケが花の後ろに回ってしまって、花が光と戯れている・・という印象が少し薄れてしまいましたし、縦構図では画面の左が少々窮屈に感じるようになってしまいました。

完成♪
完成♪ そこで横構図にして、画面の左に余韻を持たせ、緑が画面に入るように少し右に移動してみました。
ところがここで太陽が曇に隠れてしまいました。数十分待つことでようやく太陽が顔を出し、再び花と緑に光が当たりました。
プラス補正によって杉林の手前の緑が浮き立ち、緑の中で光と戯れる桜・・という、僕のイメージに限りなく近いものになりました。




(例2)コスモスのなみだ

例2は撮影の途中でイメージが湧き出した例です。
秋の桜と書いてコスモス。洋種のはずなのになぜか日本の風景にしっくりと似合う花です。山口百恵さんが昔歌っていたように、心寂しくなる秋に咲く可憐な花ですから、思い浮かんでくるイメージも何か物悲しい、寂しい雰囲気のものです。しかし、決して暗〜い物ではなく、もっと繊細でいて芯の強い・・僕にはそう、コスモスは女性の心のような印象です。

No.1
No.1 夜明け前から撮影し出す。明るくなってくると夜露が付いた花がとても綺麗でした。みずみずしい雰囲気を出しつつディテールをはっきりとさせるため、露出を抑えます。
しかし、露の付いたコスモス・・というだけであまりパッとしない。

No.2
No.2 アングルを下げてみる。レンズは85mmF2、絞り開放。バックが明るくなったので少しプラス補正し、軽く晴れやかな印象になる。
しかし、インパクトのない写真・・まだまだ絞りきれていないので、もっと寄ってみることにする。


No.3
No.3 接写リングNo.1を付けてずっと近寄ってみる。マクロレンズを持っていなくても普通のレンズでアクセサリーを使用することで接写ができます。接写リングやマクロコンバーター、クローズアップレンズなどが接写ができるようになるアクセサリーです。マクロレンズに比べ多少の画質低下は否めませんが、焦点距離の固定されたマクロレンズに比べ、最短撮影距離や画角などがレンズによって変わり、アングルを工夫することでありとあらゆる表現が可能になりますので持っておいて損のないアクセサリーです。
しずくに光が当たり、真珠のように綺麗なので黄金分割の点の位置に持ってくる。なみだを流すコスモスなんていうのも面白いなぁ〜・・なんてイメージが沸いてきた。
でもこのままだとタイトルは「しずく」・・かな?ちょっと画面に面白みがないし、ファインダーを覗く視線動きに変化がない気がする。

完成♪
完成♪ そこで花びらの曲線でしずくに流れの感覚を出せる、視線の動きに変化のあるアングルを探してみる。少し右下に移動し、ほんの少し引いてみると点在するしずくに流れる感じが出て、花芯から流れ出た水滴が頬を伝うなみだというイメージに近い感じになった。光の当たるしずくが小さくなってしまったけど、ま、これでいいか。(笑)

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