新緑最盛期の西大台トレック 2004年5月22日
今年も新緑の時期がきた。
僕はこの新緑の時期が一年で最も美しい森の姿を見ることが出来る季節だと思っている。吸い込まれそうな緑、満ち溢れる生命感、力強い森の姿だ。
大台ヶ原は新緑や紅葉の時期には大勢の登山客でごった返す。美しい森だけにそれは致し方ないこと。でもメジャーコースからほんの少し外れると静かな森が広がり、人と遭う事も少ない。
大台ヶ原の最高峰・日出ヶ岳や立ち枯れで有名な正木峠、正木ヶ原、切れ立つ絶壁の大蛇ー(だいじゃぐら)、シオカラ谷を巡る東大台コースが最もメジャーなコースとして有名だが、西大台も大台ヶ原の開拓の歴史を感じさせる豊かな森が広がっている。
コースマップ コース断面図
今回はその西大台をあいこさんのご案内で歩いてみた。
※撮影しながらのトレッキングなのでタイムは省略します。

今回の参加メンバー
こてつさんあいこさん、ふうま


※画像をクリックするとちょっと大きめの画像が出ます。黒縁画像はNaturePhotoCollectionのギャラリーにも展示しています。

教会のミヤマオダマキ 新緑の森の姿だ 緑がまぶしい
早朝、車2台でドライブウェイを大台ヶ原に向け走らせる。途中車を一台、経ヶ峰の駐車場にデポして乗り合わせて大台ヶ原大駐車場に到着。新緑最盛期の土曜日とはいえ駐車場には比較的車が少ない。そして準備を整え歩き始める。
まもなく大台ヶ原大教会に到着。教会の入り口にはミヤマオダマキが咲いていた。あいこさんはたたら亭のおばちゃんと顔見知りで仲が良い。話をしているとほんの少し咲き残っていたオオミネコザクラを見せてくれた。
天気予報では晴れだと報じていたが、今にも雨が降りそうな雲行きだ。たたら亭のおばちゃんは昼から雨になると言う。やっぱ雨か・・^^;


遊歩道は谷へと下ってゆく。よく整備された道だ。目の前にはまばゆいばかりの新緑の森が広がる。
バイケイソウとトリカブト ん〜〜気持ち良い! 苔生す深い森
沢まで下るとバイケイソウとトリカブトの群生が僕らを迎えてくれた。どちらも有毒だが若い緑はとても清々しい。沢は芽吹いたばかりの木々の間を縫うように流れている。山から沢を伝う風が心地よい。んーー、さいこー!
水は森で生まれ 下流へと流れる
ここ大台ヶ原は年間の2/3が雨だと言われているだけに小さな沢だが水量は豊富だ。地面に吸収された水をこの広大な森が湛え、雨が降らなくとも絶えることなく下流へと流れていく。
この膨大な水量を森全体でストックしているのだ。人為的に作り出したダムなどとは比べ物にならないほど自然の摂理は凄い。
沢をしばし別れる 苔生した倒木 ツタは木に寄生する
植物に必要な水はすでに蓄積されているから、沢の水は森には余分な水と言えよう。その沢の水を求めて動物たちが集い、その動物たちの糞が肥やしとなり植物が育成され、その植物の果実や葉を動物たちがついばむ。どちらが多くとも、はたまた別のものが割り込んでも成り立たない見事な自然のサイクルが営まれている。
しかしちょっと視点を変えてみるとそのサイクルには、はみ出すものは淘汰され、ふたたび森のサイクルを成り立たせるためにのネルギーとして地面に吸収されていくという厳しい自然の掟があるのだが、そのひとつひとつ全てに意味があり、無駄なものは何もないのだ。

新緑! 沢を渡る 曇り空の柔らかい光
そういったことを頭の片隅に置くことでこういった森を歩いて実際に目で見ていると、森を見る目が変わってくるだろう。新緑が美しいのにも深い意味合いがあるのだ。いつかその意味合いを判るようになれば、森の尊さが判るはずだ。

穴の開いた葉っぱ 小さな若葉。判る?
道は沢を渡る。見上げると曇り空の柔らかい光にに透過される新緑がまぶしい。ついついレンズを葉っぱに向け、我を忘れて木々の伸びゆく姿を見上げていた。
まだ若々しい木々の葉の色は慌しい日々を忘れさせてくれ、とても癒される。ん〜〜気持ちいいねぇ!

細い流れは太い流れに 木々の生命感を感じる 咲き始めのシロヤシオ
沢の流れが少し太くなった気がする。吊り橋が現れ、その脇にはシロヤシオが咲き始めていた。
しばらく小休止しているとスズメバチが僕らの周りをグルグルと回り始めた。姿勢を低くするが何度も周りを飛び回る。どうやら蜂の通り道を邪魔してしまったようだ。どこか近くに巣があるのだろう。ひとまず吊り橋を渡ってしまうことにしよう。
湿地にバイケイソウが映る 見事な森の風景だ
橋を渡ると人が立っていた。その人は挨拶をして近寄ってきた。森の利用調査をしているらしく、アンケートに答えてくれと言われたので答えた。
大台ヶ原は今のところ一般車両や観光バスなども自由に出入りできるが、ちょっと前から森林の荒廃を防ぐため車両の通行を制限し代替バスの運行を計画しているようだ。
しかし上高地のように一般車両だけを通行制限したところで観光バスやタクシーなどが上がってくるなら今までと変わらないだろう。大台ヶ原の自然を守りたいなら南アルプス林道のように許可車両と代替バスの運行のみにしてしまうべきだと僕は思う。

「開拓」と呼ばれる場所に来た。広い平坦な森が広がり、まさにおとぎ話に出てきそうな「森」が目の前に広がる。足元にはバイケイソウの群生、辺りは広大な広葉樹林が美しい。ここさいこー!
湿地には先日からの雨でルート上に水溜りができて迂回を強いられた。
イメージの中の森の姿だ いつまでも清く流れて欲しい
見渡す限りの緑一色の世界をしばし堪能し、とても名残惜しいが沢の流れともこれでお別れすることになる。
熊笹茂る尾根を登り、車をデポした一路経ヶ峰へと向かう。

製紙工場の社有地になり、数々の問題を抱えた森ではあるが、ここは大台ヶ原の開拓の原点とも言える地。年々その豊かな森は範囲を狭めているのは目に見えて判る。この姿はいったいいつまで見ることが出来るのだろうか。

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